特集記事
徳川文武の「太平洋から見える日本」
第百八十五回 人間が創生した技術進歩が人間社会を蝕む
我々人類は生活環境を改善する能力を持っている。私の愛読書、山川出版社の世界史にある年表を見ると、初期の人類が現れたのは今から七百万年の昔、西暦前三千年頃にオリエント、西アジアや他のアジア地域の大河流域に古代文明が発展した。算盤は古代オリエントのスメールで発明されたと言われる。イスラム圏では建築や図形に幾何学がふんだんに活用されたが、ピタゴラスは数論と幾何学を教えていた。西欧諸国が地理上の発見として、一斉に世界航海に繰り出した十五世紀末期は、天空の星座を基準にした航海であり、羅針盤を利用した航海だった。この意味で、世界はアナログの世界だった。西欧諸国の多くは、地続きの隣国であるか、海を隔てた別大陸であったが、わずか数百年で、世界の大陸は主には、英国、仏国、スペイン、ポルトガルなど西欧諸国の国旗がなびく植民地に分割されてしまった。こうして西欧諸国は植民地から物資を吸い上げ豊かになった。西欧本国はその富で近代化をとげた。近代化を遂げるには新しい分野の研究開発が必要だった。
その新しい分野とは、物の「大きさ」や「重さ」と言う量を計る単位の設定と量を計算する技術や「計算機」の開発だ。前出の「そろばん」は原始的にもかかわらず、大きさの単位となる「桁」送りも四則演算も可能である点は原理的に優れている。十七世紀になると計算機自身の発明も現れたが、タイガー計算機のような手回しの計算機は現在普遍的なデジタル計算の構成原理に合うような計算機の出現には、高速で動作する半導体回路が是非とも必要だった。したがって、実用的には1970年代に始まる大規模な半導体回路の開発と同時代に始まるデータの一時的保存が可能な磁気記録によるハードディスク記憶装置の出現まで待たなければならなかった。中間的な存在としてパンチカードで始動プログラムを読込んだ時期もあったが、これは姿を消した。とにかく、半導体とハードディスクの性能向上と価格低減は指数的に実現された結果、二十一世紀現在の高度情報社会が実現されたわけである。
インターネットはマイクロソフトの「ウインドウズ95」以来、IBMが個人用のコンピュータ(PC)を普及させようとBIOS「入出力システム」の基本的仕様を公開したことから急速にPC市場が拡大したが、当時アップルもPCを売り出していたものの高価で、その技術的仕様を公開していなかったため、IBM型PCとは互換性がなく、市場が広がらなかった。IBMPCもアップルPCもシリコンバレイで広く普及していたが、アップルはPC以外のiシリーズの音響応用商品の市場で成功した。アップルは電話会社AT&Tにiチューンを売り込むことに成功してから、アップルの口座で音楽やゲームの課金口座で大きな売上を計上し、株価が暴騰した。
一方、音楽やゲームと言う個人趣味の楽しみで成功したアップルに対し、PCを中心にインターネットのSMS(短文)やSNS(グループネットワーク)がPCだけでなく、携帯電話やスマホで会員間の交流が激増した。情報社会に応用される電子メイルの応用分野として「SNS」は電子メイルを通じて「特定の主張」をするグループが「過熱集合」することにより、この「過熱集合」が「格別な影響」をその外部にまで及ぼす。米国の大統領の選挙戦におけるSNSの活用は前期大統領のトランプも有効に利用してきた。バイデン大統領のSNS活用は、彼のどちらかと言うと「内向きな性格」も災いして、効果的ではなかった。一方、父がニューヨークで不動産業に成功して一財をなしたトランプは、典型的な「商売人」であり、「掛け声」商法の権化である。トランプの「関税率商法」は、身体は大きいが「心は弱い」、自分を大きく見せる「芝居商法」だ。彼は戦争で兵士が「血を流す」姿を見たくない。トランプはプーチンのように「血が凍っている」人間ではないようだ。本当の心は優しい人かも知れない。でも、国際政治では「大統領のなり振り」や芝居に騙されてはいけない。石破総理とトランプはキリスト教の宗派が同じだと言うから、これをてこに頑張ってほしい。
石破さん応援してますよ。
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