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特集記事

Vol.120 -- 2010 年 04 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」

 第13回<日本人にとっての祖国>

   親元を離れなければ、親のありがたみは分からない。国を離れなければ、自分の国が何だかは分からない。親と一緒に日本に住んでいれば、ただ当然のありようだとしか感じない。なぜ親は小言ばかり言うのか、なぜ国はもっと国民の面倒を見ないのかと。「祖国」などと言うと、誰でも構えて、常日頃、考えてもない思いを言ってしまう。多分、現代の我々にとって、「祖国」と言う言葉ほど「疎遠な言葉」はないだろう。一方、イスラエルやパレスチナでは、「祖国」と言う言葉は毎日何回も「唇を噛みしめる言葉」に違いない。日本史の教科書を見ても、名前は異なれ、日本は昔からそこにあって、どこからか引っ越してきたわけではない。
 日本が建国されて以来、他国に全土が侵略されたのは、太平洋戦争がはじめてだ。その終戦を憶えているのは六十五歳以上の退役組だ。人口統計を調べると、なんと六十歳以上が全体の三分の一もいるのだ。三分の二の国民は戦争を経験していないから、日本が侵略される想像も出来ない。したがって自分の国を防衛する事の実感は全く無い。おそらく若い世代には「日本が侵略される」とは考えられないから、なぜ軍隊が必要なのかも理解できず、お金を出せば米軍が守ってくれるのだから、その方が日本人は死ななくて済むからいいとしか考えないだろう。えっ、祖国なんて急に言われても私困っちゃう、と言うのが日本から出た事が無い若者の偽らない感覚だろう。
 広島に原子爆弾が投下され「原爆症」で何十万という人々が苦しみながら死んだと聞いても、その惨状の写真を見ても、若い世代には戦争の実感が湧かない。それに、イスラエルや韓国や台湾など、多くの国にある期間的兵役義務も日本には無い。米国にとって、日本の真珠湾攻撃は、ボストン湾の英国襲撃以来初めて受けた外敵侵略だったから、日本に対する恨みは大きい。米国人は「祖国」や「母国」と言う概念をはっきり持っている。それは「自分の国土」と言う欧米的所有権に基づく強烈な概念だ。自分の国は自分で守らねばならない。同時に米国建国の過程で、もともとインディアンのものであった領土を入植者たちが奪い取った事も確かだ。
 我々日本人ほど「国民としての自覚」がない国民は世界でもまれだと言える。それは裏を返せば、我々日本人は維持努力をせず、「あまりにも平和な環境」に住んでいるからだ。実際には、日本には多くの基地があり軍隊が配備されている。でも、平均すれば、毎日各地でけたたましくヘリコプタや戦闘機が飛び軍事訓練の爆音が聞こえると言う状況ではない。だからこそ、太平洋戦争で最大の人的被害を受けた沖縄に米軍基地が集中し、いつもの事ながら米兵によって事件が起こされても、沖縄以外の人々は理解も示さないし、祖国防衛と基地問題を身近には感じない。
 我々日本人に「祖国」と言う概念が希薄なのは、日本が自分の国を積極的に防衛していないからだけではない。普通の国の国民は「祖国」と言う言葉から、自分の国で持っている「国土、国旗、国歌、軍隊」を真っ先に思い浮かべるだろう。この点についてはのちほど考えよう。我々日本人には、残念ながら、このようなことを思い浮かべる事は、自衛官や海上警察官を除けばあまりない。国と国民との関係は「国民は国に義務を尽くす代わりに国は国民を保護する」と言うものであって、無条件で「国に年金を期待」したり「病気になったら治療」してくれることを期待したりするものではない。五十年も前に、米国のカトリック教徒でアイルランド移民を祖先に持つジョンケネディ大統領は就任演説で、米国民は祖国のために何ができるか考えてほしいと言った。
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