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特集記事

Vol.126 -- 2010 年 10 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」

 第19回<カリフォルニアは火の車>

  三ヶ月ぶりで九月にカリフォルニアに戻る。着いた当日遭遇したのは、第一の火の車、空港近くのサンブルーノ市の火事だ。エネルギー供給公社(PGE)のガス輸送管が爆発して、住宅地帯が三日にわたって燃え続いた。米国西海岸は夏に空気が乾燥して気温が上昇するので、野火がしばしば起こる。でも今年の夏はえらく涼しく、奥地のタホー湖では雪もちらちらと言うから、この火事は気候には関係ない。第二の火の車はもちろん米国経済で、失業率十三パーセントになるカリフォルニアの不景気はことさらだ。そのため、当てにしていた中国人友人、張さんの家の私の部屋ともう一つの部屋には、張さんが勤めていた半導体企業の従業員が解雇されて、居候しているから泊まれない。飛車格の張さんも、二年前に同企業の事業縮小で職を失い、失業保険の二年目だ。この若い技術者たちは中国本土から来たので、話によると、取得まで何年かかるかも分からない永住ビザの申請中で米国から動くことは出来ない。それでも彼らは毎月千六百ドルの失業保険をもらっている。
と言う訳で、私は張さんの家に泊まれないので、モーテル暮らしとなる。ウェブで見る限りは、サニーベイルかミルピータスのモーテルが安い。サニーベイルはシリコンバレイ半導体工業地帯の中心だから、南北に走る高速101号線沿いでスタンフォードにも近く、何をするにも便利だ。ミルピータスは高速101号線から東に六、七マイル分岐し、通勤時に道路が混雑するのでモーテル料金は少し安くなるものの、往き来が不便で、出来れば泊まりたくない。張さんの家に泊まれない時もあるかと、日本でミルピータスのモーテルの予約をしておいたが、五日間二百五十ドルの予約を取り消すと、五十ドルの手数料を取られた。高速101号線のサニーベイル近くの、マチルダ通りの両側は十軒ものモーテルがひしめく激戦地帯だ。私はふりで一軒のモーテル、バガボンドに立ち寄り、安い料金の部屋を探しているのだと、事務所の外に立っていたマネジャに声をかけた。人なつこい顔の彼はインド人で、いくらで泊まりたいのだと私に言った。私は、まあ一泊五十ドルだねと言うと、宿泊料五十ドルなら良いよと言ったので決めた。三十年前はシリコンバレイのモーテル所有者は白人だったが、だんだんと中国人が優勢となり、最近はインド人になった。このインド人のマネジャに、中国人の持ち主たちはどうしたのかと聞くと、彼らはホールセイル事業(中国からの輸入品卸業)に移ってしまったのだと言う。
米国のテレビは、たしか昨年に全国がデジタル化された。シュワちゃんこと、オーストリア系米国人で元ボディビル、ハリウッド俳優、現カリフォルニア州知事が、テレビニュースで記者会見し、近々中国を訪問すると言う。中国は購買力があるのだから、もっといろいろのものを買う余地があるのだと語っていた。日本のニュースで一月ほど前に取り上げられた、中国のカリフォルニアへの高速鉄道の売り込みを思い起こす。中国は高い鉄道技術を持っており、大変お得な条件でご融資もいたしますよと、中国の商務省役人は自信高々語っていたテレビの場面を思い出す。商売を取り付けるという意味では、ユダヤ人や中国人やインド人は世界一級である。中国は、米国のものを買うことと、米国に鉄道を売りこむことを天秤にかけ、「鞭と人参」を使って有利な商売をするだろう。実は2007年に全通した中国からチベットへ通じる青海鉄道建設では、中国は米国から、多くの特殊鉄道車両や設備を買ったので買いの貸しがあると思っている。中国はここのところ、米国に掴まされた国債をどんどん勇敢に売り、米国からの為替支配を減らしている。一方、日本は米国の機嫌を損ねまいとするあまりに、保有する膨大な額の米国国債は、紙屑のまま後生大事に国庫にしまっている。これが中国のしたたかさと日本の弱さの違いだ。国内に対しては、ことごと細かく法律で国民を縛る日本の役所は内弁慶で、国民が二百歳になるまで生死を確認しないとか、百三十歳まで年金を払い続けるのはちょっと困る。こんな問題は米国では考えられないが、国や自治体が法外な値段でコンピュータを買いながら、国民番号を使わないために、国民の生死の情報さえ把握できていなかったのではないか。コンピュータの価値は、神仏のように大切にし、高価な冷房つきのビルの中にしまって置くことではなく、ごしごし使って、価値を生むことなのだ。
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