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特集記事

Vol.140 -- 2011 年 12 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」

 第33回<初めての中国入りは大連>

 大連は成田から三時間の空の旅で到達でき、仙台のずっと西方にある。大連空港は改修新装され、中心街まで車で四十分くらいかかった。大連駅近くにある二十三階建ての日系ホテルが宿泊所で、十二階の部屋からは駅前の広場が手に取るように見下ろせる。表通りには新旧の高層住宅が立ち並ぶが、その背後には古い街並みもちらちら見える。市電とバスは一元、大連のタクシー(初乗り八元、百円)と警察車両の過半数がフォルクスワーゲンであることに驚く。
中国本土入りは生まれて初めてで、大連国際音楽倶楽部、年次合同オーケストラ演奏会に参加する日本団員に同行した。オーケストラは日中混成で、両国の指揮者が曲目を分担する。演奏者は日本から三十五人、中国各地から集まった日本人七人、中国人二十八人がいる。練習場は街中の子供学習センター、演奏会場は車で小一時間離れた海沿いのリゾート地にある模範中学校のホールで、本番は聴衆約三百人で盛り上がり大成功だった。
日露戦争の史跡を訪ねる
九人の楽団員たちに加わり「日露戦争史跡」見物に旅順へ出かける。旅順には軍港があるため、最近まで立ち入り禁止だったと言う。大連の日本語通訳、梁さんが半日かけて案内してくれた。十九世紀後半から二十世紀前半の中国は、太平洋戦争が終わるまで、西欧列強と日本に巨額の賠償と領土利権を取られ占領された結果、国は存亡の危機にさらされた。
ロシアはアジアでも南下政策を着実に実行し、一八六〇年には清朝から満州北部と不凍港ウラジオストックを含む北東部を獲得し、一八九八年には旅順と大連を租借し、満州西北部からシベリア鉄道バイカル線につながる東清鉄道を通し、一九〇三年には全通、ハルビンから大連、旅順に到る支線も開通した。ウラジオストックと旅順が極東ロシアの重要な軍港となる。北から朝鮮を圧迫するロシアは、日本の朝鮮介入を認めないので、日本は日露戦争をロシアに宣戦し、旅順と奉天(瀋陽)を陥落し勝利した。
今回はその爪あとを見るために、東鶏冠山、二〇三高地、白玉山、ロシア風の旅順駅、水師営会見所、日本関東軍司令本部、旅順博物館などを訪ねた。とくに、二〇三高地の爾霊山碑説明板の横に「歴史を肝に銘じ、国辱を忘れるな」と書いた立て看板の文字が生々しい。
大連市は元気いっぱい
友人と街に繰り出す。大連駅に向かって歩くと、駅前の交差点は大変な混雑だ。大連駅の駅舎は上野駅と瓜二つに見える。腹が減ったので目に入った食堂で十四元の「四川ぴり辛料理」を注文する。私には美味しかったが、友人は辛すぎると言い、どっぷりかかっているラー油をどけながら食べる。
つぎは、友人がスニーカーを買うため、駅前広場にある靴屋に入る。彼が四十九元で望みの買い物をしたあと、階段を十段ほど上がり「勝利広場」に出る。地下にエスカレータで降りると、広大な韓国市場が地下三階まである。御徒町のアメ横風に、似たような店が多数並んでいる。この地下街は、かつて、ソ連米国の冷戦時代、ミサイル攻撃に備えて作った防空壕の跡地に作ったと言うのだ。
大連中心街はロシアが租借したときの都市計画で作られた。日露戦争後に占領した日本もその街並みを踏襲、現在の中国もこれを受け継いでいる。その中心には、「中山広場」という円形の無人地帯があって交差点はない。看板こそ架け替えられたものの、旧い建物はそのまま使われている。昔の南満州鉄道の建物もそのままあるし、歴史ものの大連駅舎も使われている。
旧満鉄の終着駅、ハルビン行き(東京岡山の距離)の特急始発駅である大連長距離駅の背後には湾が広がっている。大連港は有数の漁港、貿易港、軍港でもある。湾沿いに京浜工業地帯のように開発区が広がり電車路線が走る。楽団員の一人は、この電車に乗ると、中国軍がウクライナから廃船を買って改造した超大型の「原子力空母」が海上に見えたと言う。
大連駅前で見た地元の姿は、昭和三十年代の日本成長期の上野や池袋駅前と似ていて、煙草を吸う人が多いが、将来の希望でいっぱいの表情だ。表通りでは、けんかも、酔っ払いも、浮浪者も見なかった。日本料理屋で満腹になり、広い通りを仲間と徒歩でホテルに帰る途中、交差点では客引きが声をかける。
中国は十七億の人口があるのに、大連の中心街には通勤時間でもなぜか人が多くない。それは国土があまりにも広いせいなのか、人が溢れる香港に比べて大連が田舎のせいなのか。ホテルの裏通りの路上で黙ってざくろ(柘榴)を売る老婆の姿は中国の別の顔に見えた。
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(送り先 月刊ハロー編集部)

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