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特集記事

Vol.164 -- 2013 年 12 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」

第57回<オリンピック標語「おもてなし」も泣く、日本の老舗ホテルやレストランの食材偽装>
 この十一月に発覚した阪神阪急ホテルとレストランの食材偽装事件は、実に異様だった。そこで、そのスキャンダル性よりも、これを機にもっと本質的なことを考えてみたいと思う。重要な要素として、「日本社会の変化」と「広告情報」と「消費者の志向」と「老舗の商売道徳」とがあると考える。これらの要素は互いに影響しあっている。

世界不況の原因となった二〇〇八年のリーマンショックは、構造不況に陥っていた日本の経済をさらに狂わせた。国民が希望を託していた民主党政権も短命内閣の連続で、昨年暮れの安倍政権発足で「円安と株高」が起こり、資産家たちはひとまず金儲けができた。自動車産業は大きな利益を手にしたが、その下請け企業と家電企業には昨年は波乱の年だった。報道と広告は大々的に本格化していないアベノミクスの効果による「消費拡大」を叫び始める。祝い事などあるときに、老舗ホテルやレストランで、背伸びして「少し高価な料理」を食べてみたいと思うのは、庶民であればあるほど自然な発想だ。となりの養豚場の豚肉よりも、スペインのイベリコ豚肉を使っていると言う表現が魅力に見える。テレビ番組では、以前にもましてご当地紹介と言って、贅沢な料理や九州の豪華列車の旅などで「ゆとり生活の時代が到来」と消費者の心をくすぐり続ける。毎日毎日料理ばかり見せられるので、消費者の感覚も狂ってくる。

民主党政権以来続く安売り合戦の合間に、何となく消費ムードが蔓延する。来年四月に予定される消費税率増加に対して、不動産物件など高額商品の広告を打つと、オリンピックのかけ声もあり、駆け込み需要が発生する。昨年から日中関係が狂い、期待していた中国人観光客も中国政府の指令で制限され、消費の上客が大幅に減った最中、「円安と株高」の金持たちは高額商品に目を向けるようになり、世の中には廉価商品と高価商品の二極化が進む。値引き商品ばかりを対象にしていた一般消費者も、心のガス抜きが必要となり、高額商品に金を使うようになる。低迷するデパートのお歳暮やおせち料理は考えられないほど高価になっても、予約がたくさん入る。例えば、化粧品は値段が安いと売れないと言うから、消費者の心理は分からない。

老舗ホテルやレストランも贅沢な料理が売れ始めたのに味をしめた。そこには、以前から贅沢な献立がなかったわけではないが、あまり売れなかったので食材を偽装して利ざやを稼ぐことでしのいでいたらしい。欧米社会は、殺人、暴力、強姦、強盗、詐欺などが罪とされるキリスト教が社会基盤になっている。ここの老舗のサービス事業者に「詐欺」である「偽装」が許されることはない。欧米社会は性悪説、日本社会は性善説を基盤にしている。日本の宗教は強いて言えば仏教、道徳は儒教だろうが、そこではキリスト教のような罪の概念は積極的には教えない。今回の日本老舗ホテルやレストランの食材偽装は、最高責任者が知らずに起こったとは考えられない。彼は当然ながら、売上と収益を増やすように関係者に要求したであろうし、関係者はどういう方法で、これを実現するかを説明したはずである。

日本では事業上の不祥事が起こると、報道はそれ仕事だとばかり「土下座や平身低頭」の姿を詳細に取材をする。不祥事を起こした当事者たちは、運が悪かった位にしか感じていない。企業の体質から生じる不祥事を防ぐには、「体質の改善」と「罰則の強化」が必要だ。これらが改善されなければ、不祥事は同じ企業から何回でも起こる。消費者を保護するはずの消費者庁は、企業倫理に基づく事件には、社会的制裁が適当で、処罰はしないと言うが、消費者はこれで納得するだろうか。不祥事を起こしたホテルやレストランは、テレビの会見で口を揃えて、だまされて料理を食べた客に金を返すと言っているが、そんなことは現実的でないし、口先だけの挨拶としか思えない。日本の老舗飲食サービス業とはその程度なのだと諦めるしかないだろう。海外の人々は、この一連の不祥事の情報を忘れないだろう。日本全国の料理店で使われている二合徳利の容積は、実際には、はるかに少ない量しか入らない。日本の酒を世界に広めたいなら、この際改めるべきだ。米国のように、食材店には「利用者のために必ず秤を置く」ことも法制化するべきだ。「おもてなし」には「ごまかし」がない方が良い。
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(送り先 月刊ハロー編集部)
 


 

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