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特集記事

Vol.233 -- 2019 年 09 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」 徳川文武

第百二十四回 区立中学校で授業のお手伝い

 区議さんから教育委員会に紹介され、地元の区立中学校で授業のお手伝いを経験した。この中学校は一学年四学級、科目によっては生徒の習熟度により「授業学級」が編成される。当初は英語授業のお手伝いの予定だったが、校長の要請で三年生の数学基礎コース二学級で新任の先生のお手伝いとなった。この基礎コース二学級では女子が半数よりかなり少ない。このことは、より多くの女子が習熟度の高い別の学級にいることになるのか。

 登校時間には校長を含む当番の先生が交代で校門前で生徒を出迎える。五十分間の授業が八時四十分から始まる。三年生の数学基礎学級では十五人から二十人程度の生徒が、決まった教室の決まった席にすわる。数学授業には、教科書と副読本と先生が作るA3版両面印刷の資料が使われる。この配布資料には、授業内容のまとめと演習問題が載せられている。私が授業のお手伝いを始めたとき、七月初旬の(七月十九日で前学期終了)配布資料には十頁目と書いてあり、ちょうど二次方程式の解法が始まった頃だった。

 この学校の授業表示設備は電子化されていないため、緑色の黒板に白墨で書くか、ラップトップPCから動画図形を投影機(プロジェクタ)で黒板上に投影している。しかし窓際の暗幕を引いても、緑色黒板に投影される映像は見にくい。この緑色黒板を「白板」に置換えるには相応の予算が必要になり、高価な消耗品、「マーカーペン」も必要になる。それなら引き下し型の「投影幕」を使用する方法もあると言うのが私の老婆心だ。

 数学の授業は、初めの三、四十分くらいが講義で、あとは配布資料に印刷してある問題の演習だった。講義では先生が一人一人の生徒の名前を呼びかけながら質疑対話し、緑色黒板に白墨で書いたり、投影したりしながら授業を進める。私は米国シリコンバレイの生活を十年ほど前に引き払い、日本に帰国して大学の教職に就いた。学生の名前を「さん付けで呼ぶ」ことを実践した。当時、他の先生たちはそんな呼び方をしていなかったが、十年後ここの中学校で、新任の数学の先生は、生徒を「さん付けで呼んで」いる。数年前から、テレビやラジオでも未成年者たちを「さん付けで呼ぶ」ように変ったのは、時代の変化と言うものだろう。

 さて数学の授業で問題演習になると、担当の先生は着席している生徒の間を歩いて問題を解く指導をすることとなる。世田谷区では個人的問題を抱える生徒も差別せず他の生徒と同じ教室で教える。授業中居眠りなどしているのは二割程度、鉛筆を立てて何もしていない生徒は三割程度いる。問題を次々と解いていく生徒は二割くらいか。先生が「分からない人はいますか」と問いかけても、手を上げる生徒は殆どいない。自尊心のため、分からないことを表明したくない。そこで私は、じっとしている生徒を探して、「一緒に問題を解こう」と声をかけることにすると生徒の反応は変った。配布資料から生徒に解きたい問題を選択させ、授業で習った問題の解き方の要領を再び私が説明する。私はA4版四分の一のメモ用紙を取り出し、生徒の前で話しながら、手際よく問題を解く手順を書いて見せ、そのメモは生徒に渡す。その時間は一、二分もあれば十分だ。そのやり方で解ける別の演習問題も配布資料から探し、あとは生徒に自分で配布資料に書込ませる。こうすれば一回の授業で三人から五人の生徒の演習支援ができると感じた。  新任の数学の先生は、週三回の数学の授業を合計二十二コマ教え、登校しない生徒に遠隔学習指導もする忙しさだ。諸外国と違い、日本の先生には「その他色々」(部活動や生徒指導や文科省への報告や父兄対応も)求められる。この対応が日本の先生は時間的にも忙しい。校長も担当の先生も、外からの電話には気をつかう。生徒にいじめや自殺や交通事故が起れば、学校はひっくり返る。

 欧米では、時代と共に契約精神と分業特化が進み、外部の専門家に教務以外の機能を任せた。一方、日本の学校のように閉じた環境では、文教予算節約もあり、出来るだけ多くの機能を内部の人材で消化する傾向が進んだ。最近の傾向は、スマートホンで情報を妄信することだ。生徒と父兄はホームページに発するSNSを比較し、各学校の部活動などに「過大な期待」をかける。地域の各校は評判を上げようと競争が過熱し、教職員の生活時間が圧迫されるのではないか。最近の研究によると、環境変化は新たな遺伝子を組込むという。我々日本人に「過剰競争」をする遺伝子が組込まれたのか。

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