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特集記事

Vol.270 -- 2022 年 10 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」 徳川文武

第百六十一回 ウクライナ侵攻と上海協力機構

制裁より先に自分の首を絞めるな
 今年三月に始まったウクライナに対するロシア侵攻は、私にとっては驚きの展開だった。驚きの第一は、ウクライナの一部はロシア発祥の地なのに、ロシア軍はそこに居住するウクライナ人たちの居住地を焼き尽くし、無差別に人々を殺戮させる大統領プーチンの神経だ。第二の驚きは、使用されている武器は「かなり旧式」のもので、参戦しているプーチンの軍隊の兵士の多くは、ロシア白人ではなく、旧ソ連時代の衛星諸国やロシア辺境地の「貧困な非白人」だと言うのだ。第三の驚きは、プーチンの現在の意図は「ソビエト社会主義共和国連邦」の再興と言われ、プーチンはウクライナ全土は、本来ロシアが支配すべき領土だと主張している。第四の驚きは、プーチンは黒海の制海権をとるためにロシア海軍の船団を送り、経済封鎖のために、ウクライナの海上輸送を遮断している。ウクライナにとっては陸路輸送も可能だが、従来はオデッサ付近の港湾からトルコのボスポラス海峡経由で地中海の海路で直接目的地へ穀物や植物油の大量輸送を行っていた。この輸送経路が遮断されれば、ウクライナの農業はつぶれる。

ロシアによるウクライナへの経済封鎖には、ロシアからのエネルギー資源供給ばかりか、白ロシアに近いウクライナのチェルノブイリ原発がロシア軍の攻撃目標になり、現在は六基すべてが不能状態であると言われる。この原発は一九八六年に致命的な爆発を起こし、日本からも調査救援団が送られた。ロシア軍はウクライナの鉄道の拠点をも経済封鎖の標的にしている。毎日のように家庭のテレビに、ニュースとして送られて来るウクライナのロシア侵攻で、今年の穀物が戦場となった畑の収穫ができないとか、収穫作業をする労働者が国防兵力に回されて不足しているとか、痛ましい話が尽きない。 EU(欧州経済連合)諸国は、罪もないウクライナに対して人道的に不道徳な行動を繰り返すロシアへの制裁として「ロシア産エネルギー資源」不買運動を展開した。しかしEU諸国には「転ばぬ先の思慮」が完全に欠けていた。ロシアと近いEU諸国は多量の天然ガスを購入するために「巨大なパイプライン」をロシアなどの産出国に敷設していたのだ。それが供給を受けないとなると、別の産出国から輸入する手段を新たに用意しなければならない。その輸入価格は「向こう何年間ロシアから買う価格」に比較すれば「足元を見た高価格」になってしまっている。

上海協力機構
 一九九六年に五か国(中・露・カザフスタン・キルギス・タジキスタン)で始まり、これにウズベキスタン、インド、パキスタンが参入した地勢的な安全保障を目指すとしている。八か国の総人口は三十二億、名目GDPは四十六兆米ドル、事務局は中国北京にある。参加国名を見ての通り、参加国はユーラシア諸国であるが、三大国は中国、ロシア、インドであり、保有技術力もこれら三大国が最先端を行く。最大の資源国はロシア、最大の生産国も消費国は中国であるが、人口の成長から見ると、近い将来にはインドになる。そして全八か国の内、五か国が回教国で、カザフスタンの国土が最大でウクライナの四倍ほどある。

 これら八か国のうち相互に国境紛争が絶えないのが、インドのラダック地方と中国のチベット自治区が接続する地域で、二〇二〇年以来戦闘がしばしば起こっていると言う。本日のテレビ報道によると、三千五百キロに及ぶ国境線沿いに、中国人民解放軍は六百以上の村を人為的に作り、住民を越境居住させて居住の既成事実を常態化し、インド領域の中国化を主張するものと見られると言う。他の例として、東シナ海の日本領海である尖閣諸島海域については、中国政府はその領海に対して「中国国内法を適用する」と言う通達を勝手に制定し、日本船舶が中国海域に侵入したと言う海域侵犯の頻度を言いがかりに、日本の領海域の中国領土化を主張するものと思われる。

 今回の上海協力機構会議の内容は明らかでないが、インドは、米国や西欧からも含めてロシアからも最新兵器を買っている。ウクライナ侵攻に対するEU諸国からの大幅なエネルギー資源の取引減少の穴埋めに、有利な低価格でエネルギー資源の買入を交渉しているに違いない。中国としても、大量の天然ガスを購入したい意向のようだが、ロシアの産地から太平洋沿岸に多い中国の工業地帯まで緯度四、五十度分(直線距離で五千キロ)もパイプラインを引く工事負担の価値があると思うかは疑問だ。ひょっとすると、ロシアは中国の半導体部品が欲しいかも知れない。

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